鍼治療は危険で止めといた方がいい?鍼灸治療の安全性について
鍼灸治療って針を身体に刺すんですよね?怖いんですけど…。
知り合いで鍼灸治療を受けた後、しびれが出たり、逆に気持ち悪くなったりしたって聞きました…。
以前鍼を一度受けたことがあったのですが、その時めちゃくちゃされてそれ以来二度と受けたくないと思ったんです…。
そんな感覚や思い出をお持ちではありませんか?
何も知らなかったり、実際に受けたけど良い思い出が無いと不安に感じたり、「鍼灸は嫌い!」ってなりますよね。
実はこれ、実際に僕が受けた質問の一例なのです。
一人や二人ではなく、今まで本当に多くの方にご質問いただきました。
皆さまの中での鍼灸に対するイメージはあまり良くなく、“針”と聞くだけで敬遠されてしまう人も多いと思います。
こういったご質問は鍼灸師という仕事をしていて本当に多く聞かれますし、皆さまが一番多く思う不安なのではないかなと思います。
そこで今回は、鍼灸治療って、痛くないの?跡が残らないの?後遺症とか残らないの?などなど、不安になることだらけだと思いますので、僕なりの意見や体験を正直にお答えしていこうと思います。
この記事を読んで、鍼灸に対するイメージが少しでも変わっていただけたら幸いです。
鍼灸治療で一番“事故”が起こりやすい3つのパターン
結論からお伝えすると、鍼灸治療は“きっちり慎重にすれば安全”です。
ですが、数は少ないものの中には事故につながるケースもあります。
事故が起こりやすい共通のリスクとして以下のようなものがあります。
・数多く打ち過ぎてしまう。
・危険な場所に深く刺してしまう。
・鍼をしたまま目を離してしまう。
一つずつお伝えしますね。
数多く打ち過ぎてしまう
例えば肩や首が凝るという方に良かれと思って、首や肩まわりに鍼をたくさん刺したとすると、丈夫な方は平気だったりしますが、繊細な方や体力が弱っている方などは、ふらつきや貧血、のぼせ、頭痛などの症状が出てしまう可能性があります。
これは首や肩だけを刺激しすぎたことによって起こる揉み返しのようなものです。
このように1か所に集中して刺しすぎるとこのような反応が出てしまうことがあります。
危険な場所に深く刺してしまう
もう少し奥、もう少し奥…と深く刺しすぎてしまう場合、最悪内臓を傷つけてしまう恐れがあります。
一番鍼灸治療中の事故として多いのが「気胸」と言って、肺に穴を開けてしまうことです。
胸まわりや背中、肩や首など、肺の近くに深く鍼を打つと事故につながるリスクが大きくなります。
さらに、奥には大切な血管や神経が通っている場所もあるため、間違って傷つけてしまうと内出血や痺れが出ることがあります。
鍼をしたまま目を離してしまう
鍼灸治療の中で「置鍼(ちしん)」といって鍼を刺したまま少し置いておくというやり方があります。
治療院によっては鍼にパルス電気を流して筋肉を緩めるという方法を取っているところも多いです。
それ自体に問題は無いのですが、置鍼中に施術者がベッドから離れたり、他の患者さんの施術に行ったりしてしまう時が危険だったりします。
例えば、背中まわりに鍼をして、パルスを流しながら休んでもらっていると、筋肉が緩んできます。
筋肉が緩むと鍼が深く入っていきやすくなるため、タオルなどを掛けている重みなど、ふとした時に深く刺さってしまうことがあり、気胸などの事故につながることがあります。
施術者が離れずそばにいると対応できるのですが、目を離してしまっていると放置してしまう危険があり、事故に繋がりやすくなります。
鍼灸の師匠から言われたこと
僕も鍼灸を習う上で、師匠に言われた言葉があります。
『深く刺すな。多く刺すな。無茶苦茶するな。』
です。当たり前といえば当たり前ですよね。
『理論無き鍼は打つな。』とも言われました。
なぜそこに打つのか、明確な理由が無い限りそこに打ってはいけないし、打っても効かないよということです。
なんとなくここが凝っているから打っておこう。
ここがつらいと言われたからここに打っておこう。
こういうことはやめておいた方がいいよという教えでした。今も守るようにしています。
鍼灸治療にもさまざまな流派、やり方があります
鍼灸とひとくくりにしても、やり方や流派みたいなものが数多くあります。
僕も知らないものもたくさんあります。
経絡治療、中医学、漢方、古典鍼灸、良導絡…などなど本当に多くの流派があります。
ちなみに僕は、松本岐子(まつもときいこ)先生のkiikostyle(キイコスタイル)というやり方と中野雅章(なかのまさあき)先生のAcu-zone therapy(アキュゾーンセラピー)というものを取り入れて施術に当たっています。
『この流派が良くて、この流派は危険』という事を言いたいわけではなく、『何かしら治療の軸を持っていて勉強されている先生の治療はほとんど大丈夫』ということをお伝えしたいのです。
鍼灸治療における事故が起きやすい環境
また、鍼灸において事故が起きやすい環境というものもあるのでご紹介します。
施術経験が浅い
免許を取り立ての若い先生は未熟さから事故が起きやすくなります。熱心に勉強されたり丁寧にされる方がほとんどなので経験が浅いからという理由だけでは敬遠してほしくないなと思いますが、どうしてもリスクは少し高くなると思います。
ただ、専門学校には高卒以上であれば何歳からでも入学できるため、21歳で免許を取得する方もいれば、脱サラして40代や50代で免許を取られる方もいらっしゃいます。
以前勉強会で60代の大ベテランの方とペアになったことがありました。
ベテランの方だし胸を借りよう、迷惑かけないようにしようと思ってお話しさせてもらっていると、なんとその方は『学生さん』でした。とても驚いたことを覚えています。
『見た目は大ベテランだけど、実は若手』という方も少なからずいらっしゃいますので、見た目だけで判断しない方がいいと思います。
何かしらの勉強をしたことがない
定期的に勉強会に参加したり、治療の軸を一つ持って治療にあたられている先生は大丈夫だと思いますが、特に何も勉強したことも無いという方もいらっしゃいます。
柔整鍼(じゅうせいばり)と言われたりもしますが、痛みやコリの部分にだけ刺激している先生も多くいらっしゃいます。
あまり何も考えずに施術している方はいないと思いますが、先生なりの理論や理屈が無い施術は少し危険かもしれません。
全体的に刺激が強い
先生の性格によるのかもしれませんが、刺激量の強い鍼灸治療も少し気を付けた方がいいかもしれません。
マッサージや指圧の刺激が強い方は、鍼をしても刺激が強くなる傾向にあります。
刺激が強いのが好きだという方もたくさんいるので何とも言えないところですが、繊細な方は刺激量が強くなればなるほど、後になってしんどくなる可能性が高くなります。
この3つが重なっていると危険度が少し高くなるかなと思うので施術を受ける際の参考にしていただければと思います。
今まで事故を起こしたことは無いの?
最後に僕の話を正直にしますね。
さいわい免許を取得してから9年目になりますが、今まで肺に穴を開けてしまう気胸や臓器を傷つけてしまうような重篤な事態になったことはありません。
内出血に関しては何度かあります。これはその人の体質やその日の体調によってどうしても出来てしまう時があるのですが、一番大きかったもので500円玉くらいの大きさを作ってしまった時もありました。
昔20代前半の頃、一度だけ刺した鍼を抜き忘れて帰してしまったことがありました。
その時は、患者さんが気付いてくれて返しに来てくれたので事なきを得ましたが、反省しました…。
現在はAcu-zone therapy(アキュゾーンセラピー)を中心にするようになりましたが、これに変えてからはほとんどそういったものは無くなりました。
Acu-zone therapy(アキュゾーンセラピー)で使用するツボは、頭皮、手首、足首、腰まわりとなります。
肺周辺や首など危険度の高い部分には鍼を打たないため、気胸などが起こるリスクはゼロになりましたし、打つ場所も10か所も無いため刺激過多も起こりにくくなりました。
打つ深さに関しても数㎜程度のため、深く刺して神経や血管を傷つけてしまう危険もありません。
コリの強いところだけに刺激をするという事もしないため、のぼせやふらつきが起こる心配もなくなりました。
そういう『リスクの少なさ』『安全性』に加えて『効果の高さ』から僕はこの方法で行こうと決めたわけなのです。
今の治療院はマンツーマンが基本なため、目を離すこともありません。
「以前、鍼治療を受けた時に滅茶苦茶されて絶対もう嫌だと思ったけど、この治療なら受けられます。」とおっしゃってくれた方もいます。
そう言っていただけて本当に嬉しい限りです。
怖がりで繊細な方ほど、鍼灸はよく効く
実は怖がりで繊細な方ほど、鍼灸治療はよく効いてくれたりするので、敬遠しすぎるのはもったいないなと思ったりしています。
過度の緊張も治療後の悪化につながりやすいため、どうしても怖い方は鍼を使わない施術を受け、まずは先生との信頼関係づくりから始めてみてはいかがでしょうか?
そこで、この人の施術なら受けてみようかなと思われたらチャレンジしてみてもいいのではないでしょうか?
当院でも鍼を使わない手技施術も行っておりますのでお気軽にご相談くださいね。
いかがでしょうか?
鍼灸治療に関してはイメージがどうしても先行してしまいがち。
ですが実際に受けてみると、「こんなもんか。これなら大丈夫。」と安心される方がほとんどなので、身体がつらくて困っているという方は、一度チャレンジしてみてほしいなと思います。
あなたの身体のケアに鍼灸治療がお役に立てれば、嬉しいです。
それでは。
鍼灸治療院HARINO 米増圭司